かなり独断ではありますが、MAN WITH A MISSION(マンウィズ)のフルアルバムを順番に解説しています。
前作【The World’s On Fire】は日本人離れ?した曲調が多く、アメリカンサイズの分厚いハンバーガーが並んでいるようなアルバムでしたが、続く【Chasing the Horizon】はシェフのわがままデザートが並んだショーケースのようなイメージです。
かなり聴きやすいタッチの曲が多いですが、そこはマンウィズらしく、一口食べただけではわからない魅力もいっぱい、ヘビーローテーションできるアルバムです。
今回もアルバムに収められている順番で、好き勝手に感想を書きたいと思います。
①2045
作詞 Kamikaze Boy / Jean-ken Johnny
作曲 Kamikaze Boy
1曲目から【Chasing the Horizon】のカラーが感じられる、デジタルロック?テクノロック?ミクスチャーロック?が炸裂します。今回のアルバムはこんな感じなんですね…という予感はきっと当たります。
AIの成長曲線が一線を超えるシンギュラリティがテーマで、音楽的にもかなり攻めていると感じます。決してリズムが速いわけではありませんが、思わず前のめり!そういうマンウィズの良いところが詰まっています。USJの夏のイベントとのタイアップも話題になりました。
②Broken People
作詞 Jean-ken Johnny
作曲 Jean-ken Johnny
エッジの効いたギターサウンドが最高に気持ちいい曲です。聴こうと思ったら聴ける、踊ろうと思ったら踊れる、BGMでもいける、何度でも美味しい曲が揃っているこのアルバムを象徴している1曲です。
「さぁ、ゲームのはじまりだ」
「なんてぶっ壊れた奴らだ」
日本語歌詞だと、いろいろとNGになるんじゃないかな?
③Winding Road
作詞 Kamikaze Boy / Jean-ken Johnny
作曲 Kamikaze Boy
じっくりミディアムナンバーですが、聴きようによってはリズミカルな行進曲にも感じられる前向きな1曲です。まさに目の前に道が広がっていくような、スケールの大きさと決意のようなものが包み込みます。
「この星の数だけ 希望を照らし出す」というフレーズは、本当にマンウィズらしいですね。
④Hey Now
作詞 Jean-ken Johnny
作曲 Jean-ken Johnny / DJ Santa Monica
自分で掘った穴に落ちるがいい!っていう強烈なメッセージの曲ですが、とにかくAメロ~Bメロの Jean-ken Johnny がカッコいいです。サビはサビでインパクト大、ちょっと小バカにするようなAメロの歌い方、バックのリズム、マンウィズでもありそうでなかった曲だと思います。ギターも強烈に鳴っていますが、エレクトロポップみたいなジャンルでも、そのまま通用しますね。
⑤Please Forgive Me
作詞 Kamikaze Boy / Jean-ken Johnny
作曲 Kamikaze Boy
バラードのようにしっとりと幕を開けたと思ったら、光のトンネルを抜けるかのように、いつの間にかビートに乗って、ドラマチックに展開する不思議な魅力の曲です。アレンジが光りますね。
タイトルを直訳すると「どうか許してください」ですが、唯一僕が生きていることを実感させてくれる人、唯一僕が安心させてくれる人、に向かって歌い上げています。身近な大切な人っていうより、宗教的なイメージを持って聴いています。
⑥Take Me Under
作詞 Jean-ken Johnny
作曲 Jean-ken Johnny
何度も訴える take me under も take me down with you も、直訳すると「連れて行って」ですが、物理的な連れて行くではなくて、違う次元に行っちゃうようなイメージです。パンク要素が強い男気ロックで、こういう曲を「いかにもマンウィズ」と言うファンも多いと察しますね。
➆Freak It!(feat.Tokyo Ska Paradise Orchestra)
作詞 Kamikaze Boy / Jean-ken Johnny
作曲 Kamikaze Boy
東京スカパラダイスオーケストラを迎え入れてのコラボレーションです。期待通りのファンクビートで、聴いていて気持ちいい曲です。アルバムの①~⑤くらいまでがデジタル解禁エリアとすると、⑥~⑧はノリ重視のリズム全開エリアって感じです。
さすが世界を舞台に活躍している両者のコラボって感じで、お祭り感がすごいですし、これがアルバムに溶け込んでいることも、ふと考えてみるとすごいことです。
⑧Break the Contradictions
作詞 Jean-ken Johnny
作曲 Jean-ken Johnny
思わず手拍子が出るリズムで「矛盾をぶっ壊せ」と歌うわけですが、とにかくノリがいいパーティーソングです。②Broken People と同様に、このアルバムじゃなきゃ収まる場所がないってくらい、とにかくエッジが効いたボーカルとリズム隊が印象的ですが、飛び回っているエフェクトも何気に素敵です。
⑨My Hero
作詞 Kamikaze Boy / Jean-ken Johnny
作曲 Kamikaze Boy
重低音が鳴り響く極太ロックで、ベースの存在感がより際立っていると感じます。
「ヒーローよ この戦いを終わらせるためには 何をしたらいい」
と歌うサビに心打たれるものがありますね。オオカミがこの曲を歌うなんて、知らない幼児が聴いたら泣きそうですが、ポップスの裏側にあるようなこの曲をシングルにして、たくさんの人に聴いてもらおうとするあたりが、マンウィズのすごさです。
⑩Dead End in Tokyo
作詞 Kamikaze Boy / Jean-ken Johnny / Patrick Stump
作曲 Kamikaze Boy / Jean-ken Johnny / Patrick Stump
アメリカを中心に大人気の4人組ロックバンド Fall Out Boy(フォール アウト ボーイ)のボーカルやリズムギターを担当する Patrick Stump(パトリック スタンプ)を迎え入れてのシングルです。
タイトルを直訳すると「東京の終点」とか「東京の行き止まり」のような袋小路っぽいイメージかな?東京で暮らす、希望のない未来を歌っていますが、幻想的な雰囲気、呪術的な香りもする曲です。第一印象だけ切り取ると⑨〜⑩は、前作の流れを継いだメロディアス路線に感じます。
⑪Chasing the Horizon
作詞 Jean-ken Johnny / Shaun Lopez
作曲 Jean-ken Johnny / Shaun Lopez
スタンダードナンバーのように軽やかにAメロがはじまりますが、途中から訴えかけるような力強いメッセージに変わっていきます。2つの曲を合体させたんですか?というくらいの転調ですが、これがオシャレに聴こえてしまうのがマンウィズです。
アルバムタイトルにもなっている Chasing the Horizon は、直訳すると「地平線を追いかける」ですが、マンウィズ自身が誰も到達していない世界を目指しているイメージで聴いています。
⑫Find You
作詞 Jean-ken Johnny
作曲 Jean-ken Johnny
全編日本語 Tokyo Tanaka ボーカルによる壮大なバラードです。マンウィズには珍しくストレートなラブソング(失恋ソング)だと思いますが「君をまた見つけるから」という歌詞は、違う引き裂かれ方があったのかな?
広い会場で大切な人と、手を繋いで星を眺めながら聴きたい曲です。優しいシンセサイザーと響き渡るギターの音色で、何度聴いても胸に刺さります。「地平の果てで歌い続けて 星を捕まえてた」と歌う歌詞は、直前の⑪Chasing the Horizon からの流れを感じますね。
⑬Dog Days
作詞 Kamikaze Boy / Jean-ken Johnny
作曲 Kamikaze Boy
最終盤で鋭いメロディのロックチューンで盛り上げます。まるでアンコールの1曲目のようにグイグイ展開するリズムは、ドライブにもピッタリ!ギアが上がるしかないです。5人で表現できる音を詰め込んで、なんとなく初期のアルバムっぽい勢いの曲だなと感じています。
⑭Sleepwalkers
作詞 Jean-ken Johnny
作曲 Jean-ken Johnny
ツインボーカルでしっとりと歌うナンバーでエンディングを迎えます。地平線の彼方で醒めない夢を見ているイメージでしょうか。激しい展開のアルバムの世界に連れ回されて、最後の最後にあまりにロマンチックなオルゴールのような曲が降ってきて「あぁ、最後の曲か…」と現実に戻る落差がすごいです。
この後3年以上、フルアルバムのリリースが途切れますが、シングルを連発したり、コロナ禍で制約ばかりの状況でも、やれることを考えてくれたり、本当に音楽が好きで精力的に動くバンドですよね。ファンを大切にしていることも、ビシビシ伝わります。
ここまでの5枚を比べると、本作はいろんなシーンで聴きやすいし、カッコいいメロディが多いので、初めての1枚にもおすすめできると思います。全然違う魅力の曲が並ぶので、悩みに悩みますが、頑張っておすすめを選ぶとしたら次の3曲かな。カッコよさ1本で選びました。
①2045
②Broken People
⑫Find You
マンウィズは本当に、ハズレアルバムがないどころか、ハズレ曲もないので、別にどのアルバムから聴いても大丈夫そうですが、今回のアルバムに関しては
「マンウィズっていいよね」
っていうレベルから
「マンウィズでなきゃダメ」
っていう純愛レベルに持っていくパワーがあると思います。まだ未体験でしたら、ぜひ聴いてみてください!